2025.12.18

トヨタグループが横浜にイマーシブ・ミュージアム「THE MOVEUM」をオープン。その理由とは?

横浜の山下ふ頭を舞台に、トヨタグループによるイマーシブ・ミュージアム「THE MOVEUM」がオープンする。

文=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

公開されたTHE MOVEUMの内部
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 横浜の元町・中華街からほど近い、山下ふ頭にある巨大倉庫。ここがイマーシブ・ミュージアム「THE MOVEUM」として12月20日にオープンを迎える。

 近年、「イマーシブ」を掲げる展覧会やイベントはもはや珍しいものではない。しかし本施設に注目すべき理由は、トヨタグループが運営している点にあるだろう。

THE MOVEUM外観
記者会見の登壇者ら。左から豊田章男(トヨタ自動車代表取締役会長)、山口智子(俳優)、シグリット・ベルカ(駐日オーストリア大使)、山中竹春(横浜市長)、都倉俊一(文化庁長官)

 先行披露レセプションに登壇したトヨタ自動車・豊田章男会長は、トヨタグループが長年、社会貢献活動をしてきたとしつつも、その認知度の低さを指摘。この場所を同グループの芸術分野へのコミットメントを示すための「器」と位置づける。東京やみなとみらいなどからのアクセスを考慮し選ばれたのが、約6000平米の広さ(展示面積は約1800平米)をもつ山下ふ頭4号上屋だ。

マテオ・メッセルヴィによってライトアップされたTHE MOVEUM。ライトアップは会期中、毎日16:30~24:00の時間帯に実施

 THE MOVEUMは、THE MOVEUM THEATERとTHE MOVEUM STUDIOで構成。前者はメインステージ、2Fエリア、ミラールームからなり、第1期のプログラムとして、グスタフ・クリムトエゴン・シーレの作品で構成された52分の映像「『美の黄金時代』グスタフ・クリムトとエゴン・シーレ〜光と影の芸術家たち〜」を上映。75台のプロジェクターと27台のスピーカーによって広大な空間に映像と音楽が行き渡り、没入感を誘う。

メインステージに投影された「『美の黄金時代』グスタフ・クリムトとエゴン・シーレ〜光と影の芸術家たち〜」
ミラールームの様子

 またTHE MOVEUM STUDIOでは、スタジオプログラムの第1期として、俳優・山口智子がプロデュースするプロジェクト「LISTEN.」を上映。10年をかけて世界各地で収録した音楽文化が15分の映像プログラムとして上映される。

「LISTEN.」の上映風景

 日本を代表する大企業によるイマーシブ・ミュージアムへの取り組み。文化庁の都倉俊一長官は、「現在のエンターテインメントとアートの両方が同時に体験できる」としつつ、「ライブエンターテインメントは様々なかたちがあり、技術革新がされてきた。プロジェクションマッピング技術の高さが証明されるのではないか」とコメント。

 また自身も美術館を度々訪れるという豊田会長は、「音楽と映像に没入できる空間。まずは感じてほしい。世界中の国宝級の作品とつながるルートをつくり、現地へと足を運ぶきっかけを提供したい」と、本施設にかける想いを語った。

 第1期の会期は2026年3月31日を予定。その後の展開は明らかにされていないが、継続的な運営が期待される。