2025.12.17

若冲の名作 重要文化財《菜蟲譜》と新発見の《果蔬図巻》が史上初のダブル展示。福田美術館で「若冲にトリハダ! 野菜もウリ!」展開催へ

京都・嵐山の福田美術館で、伊藤若冲の名作《菜蟲譜》と、新たに発見された《果蔬図巻》を同時に展示する企画展「若冲にトリハダ! 野菜もウリ!」が、2026年4月25日から7月5日まで開催される。

伊藤若冲 果蔬図巻(部分) 福田美術館蔵 通期展示
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 京都・嵐山にある福田美術館で、伊藤若冲(1716〜1800)の名作《菜蟲譜(さいちゅうふ)》と、新たに発見された《果蔬図巻(かそずかん)》を同時に展示する企画展「若冲にトリハダ! 野菜もウリ!」が、2026年4月25日から7月5日まで開催される。若冲芸術の核心とも言える2つの巻物が並んで公開されるのは史上初となる。

《菜蟲譜》は、全長約11メートルに及ぶ絹本着色の巻物で、前半に野菜や果物、後半に昆虫や爬虫類などの小動物を描いた、若冲晩年の代表作。国の重要文化財に指定され、佐野市立吉澤記念美術館が所蔵する。本作が関西で展示されるのは2018年以来、約8年ぶりとなる

伊藤若冲 菜蟲譜(部分) 佐野市立吉澤記念美術館蔵
展示期間:4月25日~5月8日、6月20日~7月5日

 いっぽうの《果蔬図巻》は、2023年に新たに発見され、福田美術館の所蔵となった作品。寛政2年(1790)、若冲が75歳以前に描いたとされ、全長約3メートルの画面に、瑞々しい野菜や果物が豊かな色彩で描かれている。約1年に及ぶ修理を経て、今回の展覧会で本格的に公開される。

伊藤若冲 果蔬図巻(部分) 福田美術館蔵 通期展示

 若冲は《果蔬図巻》を描いた翌年に《菜蟲譜》を完成させており、両作には描かれる野菜の種類や彩色方法など、多くの共通点が見られる。青物問屋を営んでいた若冲ならではの、自然物への細やかで温かなまなざしも、2作を見比べることでより鮮明になるだろう。文化財保護の観点から展示期間が限られる《菜蟲譜》と《果蔬図巻》が並ぶ機会はきわめて稀少だ。

初公開となる若冲作品は計7点

 本展ではこのダブル展示を軸に、若冲初期の《蕪に双鶏図》から晩年作まで、約40点の若冲作品を紹介。さらに、、2025年に福田コレクション入りした《老松白鶴図》(福田美術館蔵)や、個人蔵の《果蔬涅槃図》《蛇図》など、初公開となる若冲作品は計7点にのぼる。また、箱根の岡田美術館がかつて所蔵していた伊藤若冲《花卉雄鶏図》、《三十六歌仙図屏風》、円山応挙《群犬図》、長沢芦雪《牡丹孔雀図》の4点の名作も福田コレクションに加わり、本企画展にて公開される。

 福田美術館学芸課長の岡田秀之は、「彼が格別の愛情を込めて描いた傑作《果蔬図巻》と《菜蟲譜》が、本展にて史上初の同時公開を果たします。重要文化財である《菜蟲譜》が関西で公開されることは珍しく、8年ぶりの貴重な機会となります。2つの名品を見比べることができる稀有な体験を、できるだけ多くの方に味わっていただければと思います」とコメントしている。

伊藤若冲 老松白鶴図(部分) 福田美術館蔵 通期展示