2025.4.18

「デザインあ展neo」(TOKYO NODE)開幕レポート。デザインを身体で感じる

「デザインあ展」をアップデートした「デザインあ展neo」が虎ノ門ヒルズ ステーションタワーのTOKYO NODEにて開幕した。会期は9月23日まで。

文・撮影=安原真広(ウェブ版「美術手帖」副編集長)

展示風景より
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 「デザインあ展neo」が虎ノ門ヒルズ ステーションタワーのTOKYO NODEにて開幕した。会期は9月23日まで。

 同展は、過去2期にわたり、累計116万人が来場した「デザインあ展」をアップデートしたものだ。「デザインあ展」は2013年の21_21 DESIGN SIGHTを皮切りに、2018年~2021年に日本科学未来館富山県美術館など全国6つの会場で開催され、のべ116万人が来場した。3回目となる「デザインあ展neo」では、作品を新たに制作し、子供たちがデザインについて様々な思考・発見を楽しめる展示が目指されている。

展示風景より、「おいしそう!?」

 本展のテーマは「行為(動詞)」だ。展示空間は「あるく」「たべる」「すわる」「もつ」といった動詞ごとのまとまり構成されており、35点の新作が展開されている。

展示風景より、「すわらない世界」

 会場の入口では、天井から吊り下げられた巨大な「あ」の文字が来場者を迎える。その下には様々な日常の行為を想像させる、nomenaによる「動詞の庭」が展開。道具をあつかう日常のシーンを思い起こさせるものが集められており、人間の行為を多様な視点から想起させる仕掛けとなっている。

展示風景より、天井の「あ」
展示風景より、nomena「動詞の庭」

 最初の展示は「あるく」だ。Scott Allen +パーフェクトロンの「あるきカタログ」は、6つのブースでそれぞれの体験者がカメラに指示されたポーズをとると、写真がパラパラ漫画のようにつながり、歩いているように見える。「あるく」という行為がどのような要素で成り立っているかを、遊びながら考えることができる。

展示風景より、Scott Allen +パーフェクトロン「あるきカタログ」

 寺山紀彦+パーフェクトロン「だれもぶつからない」は、渋谷のスクランブル交差点立体的にとらえた展示だ。たくさんの人が混じり合うように歩いても誰もぶつからない交差点での人々の移動を、立体的に可視化した。

展示風景より、寺山紀彦+パーフェクトロン「だれもぶつからない」

 パーフェクトロンの「横断歩道はどれ?」も、興味深い。展示室のあいだを結ぶ廊下には、間隔の異なる縞模様による3つの横断歩道が現れる。このなかのひとつが、いつも歩いている横断歩道の間隔になっているが、すぐに正解がわかる人は意外と少ないのではないだろうか。我々が日常のなかで見過ごしているデザインを改めて意識する契機といえる。

展示風景より、パーフェクトロン「横断歩道はどれ?

「たべる」をテーマとした展示では、プラプラックスによる3メートルを超える巨大な箸が登場。自分が食べられる側になるような感覚を得ることができる。

展示風景より、プラプラックス「たべられるきもち」

 おなじくプラプラックスによる「オノマトピース」は、「ふわ」「サク」「ジュワ」といった様々な食感を表すオノマトペが印字された積み木を使った展示。丼、串、手巻き寿司といった食べ物のフォーマットに当てはめることで、食感から料理を想像することを促す。

展示風景より、プラプラックス「オノマトピース」

 「ひとくち あーん」もプラプラックスによる展示だ。人が箸やフォークで何かを食べようとする動作だけを抜き出して立体化。無意識のうちに行われている身体の動きを可視化するとともに、それを支える道具の機能と形態も意識させる。

展示風景より、プラプラックス「ひとくち あーん」

「すわる」をテーマとした展示では、まずパーフェクトロンによる「学童イスのゆめ」が目を引く。多くの人が使用してきた、小学校で使う学童イスを様々なかたちでアップデート。ベンチ、ビーチチェア、社長が座るようなイスなどに変形した学童イスが、目的や用途によって様々な形態を持つイスの意味を問いかける。

展示風景より、パーフェクトロン「学童イスのゆめ」

 「えらそうなイス」もパーフェクトロンが手がけたものだ。イスが歴史的に持っていた権威性に着目し、赤い絨毯が敷かれた階段を上った先に、豪華なシルエットのイスを設置。権力者の気分を味わえるだけでなく、座るだけではないイスの機能を意識させる。

展示風景より、パーフェクトロン「えらそうなイス」

 「もつ」をテーマとした展示では、岡崎智弘の「もちごこち」に注目したい。様々な大きさのオブジェを、示された凹みに合わせて持ち比べることができる。モノや道具の大きさがどのように決められているのか、身体感覚から考えることができる。

展示風景より、岡崎智弘「もちごこち」

 また、岡崎智弘+nomaneの「もちはこびトライアル」は、ちくわ、フライパン、ギターといった道具をパイプに当たらないように持ち運ぶゲームだ。金属のガードに接触しないように運ぶことで、持ち運ぶという観点からデザインを考える。

展示風景より、岡崎智弘+nomane「もちはこびトライアル」

 「さがす」をテーマとした荒牧悠の「じっくりしっくり」は、様々なかたちに穴の空いたシートを、たくさんあるピンに合わせながらはめていく展示。うまくピンがはまるように、シートを回転させたり裏返したりする過程で、シートの形状を様々な角度から意識することになる。

展示風景より、荒牧悠「じっくりしっくり」

 中村勇吾による《DO IT!》は、大型モニターに映る映像に合わせて身体を動かす、インタラクティブな展示だ。蓮沼執太の音楽と、DJ KOOのかけ声に合わせて、映像に移された道具と同じ動きをする。道具がどのような動きによって機能しているのかが、ジェスチャーだからこそ可視化される。

展示風景より、中村勇吾《DO IT!》

 NHK Eテレで放送中の番組「デザインあneo」から出張するかたちで、番組のコーナーが展示になったものも用意されている。阿部洋介+藤森吉昭+稲福孝信「デッサンあ」は、モチーフを囲うように様々な人がデッサンする番組内のコーナーから生まれたものだ。会場では、原付バイクを取り囲むように置かれたイーゼルとイスに座って様々な角度からデッサンをすることができる。

展示風景より、阿部洋介+藤森吉昭+稲福孝信「デッサンあ」

 また、同番組で人気の映像コーナーは、巨大プロジェクターに囲まれた空間で、大音響で楽しむことができる。満を持しての第3弾となった本展。子供も大人も、デザインという概念を様々な角度から考えることができる展覧会となっている。

展示風景より、平本宗一郎+山中有・蓮沼執太・優河「つくるのうた」