森星に聞く祖母・森英恵から学んだこと、そしてプロジェクト・tefutefuに込めた思い
ファッションモデルとしても活躍する森星を中心としたプロジェクト・tefutefu。このtefutefuがキュレーションを務める展覧会「色寂 irosabi」が、銀座和光の地階のアーツアンドカルチャーで8月20日まで開催中だ。tefutefuと本展にかける思い、そして祖母・森英恵から学んだことについて話を聞いた。

──日本の歴史や伝統、原風景に触れながら、衣・食・住にまつわる文化や暮らしの美学を見つめ直し、国内外に発信するプロジェクト「tefutefu」。森さんが本プロジェクトに込めた思いを教えていただけますか?
モデルという仕事をするなかで、国内外のブランドのデザイナーによる手仕事に触れる機会が多くありました。ものづくりやデザインがどのように生まれ、それを身につける人につながっていくのか、現場でそれを体感する経験を重ねるうちに、見過ごしていた日本のものづくりや美学に改めて気づき、探求したいと思うようになったんです。
また、デザイナーであった祖母・森英恵(1926〜2022)の存在も大きいと思います。祖母は日本の文化に誇りを持ち、自分が触れてきたその文化を世界と交換したいという思いで服づくりをしていましたし、その姿勢には強く共感します。
プロジェクトの名前「tefutefu」は、平安時代から蝶を表すのに使われていた「蝶々(てふてふ)」から採っていいます。かつての日本の女性たちのまわりにあった、ひらがなや香、衣服の色目の重ねといった文化への敬意を込めて名づけました。季節の移ろいを愛でる感性を、年齢を重ねるなかで磨いていきたい。「tefutefu」はこうした思いを発信するプラットフォームなんです。

──2020年に開催された「森英恵 世界にはばたく蝶」(水戸芸術館 現代美術ギャラリー)では、お祖母さまが若い頃から海外に行かれ、日本の文化を発信することを強く意識されていたことが紹介されていました。お祖母さまから具体的に教わったことや影響を受けたことはありますか?
大きく2つあります。1つは「色」です。祖母は、時間の移ろいを色でとらえる感性を大切にしていました。祖母の故郷である島根県吉賀町を、私も何度か訪れていますが、本当に美しい場所なんです。祖母は故郷の山の緑や花々、庭先に実った柿など、自らが育った環境のなかで触れた色を創造の源にしていました。それらは普遍的に美しい色であり、同時に世界で戦う武器にもなっていた。
もう1つは「ファッションとアートの力」です。祖母は戦後すぐのモノクロだった世界に海外からもたらされた、クリスチャン・ディオールやシャネルの明るい色彩とデザインに強い感動を覚えたそうです。ファッションやアートが生み出す感動が、彼女がデザイナーという仕事を志す原動力になったこと。そのことは、私も大切にしたいと思っています。
この2つは、自然からインスピレーションを得て、それを芸術に変えるという、いまの私がやりたいことへとつながっていきます。今回の「色寂 irosabi」も、祖母から学んだこの姿勢を大切にして臨みました。
