2025.4.16

「WHO ARE WE, WHERE ARE WE GOING? 〜どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?〜」(PLAY! MUSEUM)開幕レポート

PLAY! MUSEUMで、国立科学博物館とコラボレーションした展覧会「WHO ARE WE, WHERE ARE WE GOING? 〜どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?〜」がスタートした。会期は7⽉6⽇まで。

文・撮影=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

展示風景より、「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」
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 東京・立川のPLAY! MUSEUMで、国立科学博物館とコラボレーションした展覧会「WHO ARE WE, WHERE ARE WE GOING? 〜どうぶつ展 わたしたちはだれ? どこへむかうの?〜」がスタートした。会期は7⽉6⽇まで。

 同展は、2022年に国立科学博物館で開催された企画展「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」の巡回展となるもの。今回のPLAY! MUSEUMでの開催にあたって独自の企画展示や体験型インスタレーションが追加されており、「私たちは誰なのか」「どこに向かうのか」といった未来に対して問いを投げかけ、前向きに考えることを促す内容となっている。また、企画展示にあたっては現代アーティストらとのコラボレーションも見どころだ。

左から、草刈大介(PLAY!プロデューサー)、川田伸一郎(国立科学博物館動物研究部 研究員)、鈴木康広(アーティスト)松山真也(テクニカルディレクター / siro.Inc)、矢部太郎(芸人・マンガ家)、横浪修(写真家)

 本展では、会場を大きく3つのエリアに分けて構成。まず国立科学博物館の巡回展となる「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」エリアでは、世界屈指の動物標本コレクションとして知られる「ヨシモトコレクション」を中⼼に、貴重な標本を選定して展示。哺乳類の持つ特有の⽣態や特徴を「ちがいの整列」「はえている道具」「かもしれない模様」といった11つの新たな視点から紐解いていくことで、哺乳類の多様性やヒトとのちがいを観察することができるものとなっている。

展示風景より、「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」

 また、この展示の大きな魅力として、自分で引き出しを開けることで「新たな視点を発見」することができるといった演出にあるだろう。本企画展の編集・デザインは、⽇本デザインセンター三澤デザイン研究室が担当している。

展示風景より、「WHO ARE WE 観察と発見の生物学」

 ふたつ目のエリアでは、横浪修(写真家)、松原卓⼆(写真家)、矢部太郎(芸人・マンガ家)、siro Inc. 、下岡晃(ミュージシャン / Analogfish)、鈴⽊康広(アーティスト)といった、「WHO ARE WE」のコンセプトを受けたクリエイターらによる体験型インスタレーションがそれぞれ展開されている。

 例えば、横浪修と松原卓⼆は、ヒトをはじめとする哺乳類の特徴でもある「表情筋」と、それによって生まれる「笑顔」に着目。三角形でつくられた壁面には、ヒト・哺乳類の表情豊かな写真や偉人による言葉が立体的に展示されるほか、鑑賞者の顔を映し出す鏡も設置されている。

展示風景より、横浪修・松原卓⼆「笑顔の森」

 矢部太郎による「ずばぬける!」では、ヒトならではの特徴、つまり自分たちの持つ「ずばぬけた個性の豊かさ」に目を向けている。ここでは矢部によるマンガが紹介されるほか、鑑賞者が参加することができるワークショップも実施。このふたつはどちらも「ヒト」である我々の特徴にフォーカスしたものとなっている。

展示風景より、矢部太郎「ずばぬける!」

 デジタルテクノロジーとデザインによる提案を行うsiro Inc.は、哺乳類の「しっぽ」に注目した。この小さな椅子に座ることで、不思議とその背面からしっぽが印刷された紙が出力され、しっぽにまつわるクイズが出題される。まるで自分にしっぽが生えたかのような出来事に驚くとともに、様々な動物のしっぽについて知ることができるだろう。ちなみに、しっぽの種類は全39種。どれが出るかはお楽しみだ。

 ミュージシャンの下岡晃は、動物によって異なる多種多様な「心拍数」をテーマにうたを制作。軽やかなメロディと深く刺さる歌詞が、展示空間をやさしく包み込んでいる。

展示風景より、siro Inc.「しっぽはすごい」
展示風景より、下岡晃(Analogfish)「⼼拍ソング」

 アーティストの鈴木康広は「模様」に着目し、動物がもとより持つ模様とヒトがつくりだした模様を用いたインスタレーションを展開している。回転する球体に、平面の模様をプロジェクターで投影することで、それぞれの模様が持つ特性に気付かされるとともに、その新たなとらえかたを提案している。

展示風景より、鈴⽊康広「模様の惑星」

 最後のエリア「ユートピア」では、ヒトに与えられた「創造力」にフォーカスし、名和晃平やミロコマチコら9⼈のアーティストとのコラボレーション展示を実施。約2万年前に描かれたラスコーの洞窟の動物絵から、いまなおクリエイターらによって生み出される空想の動物やキャラクター。この約40点の作品を通じて、「私たちはどこに向かうのか」という本展のテーマにあらためて向きあうものとなっている。

展示風景より、「ユートピア」
展示風景より、「ユートピア」

 国立科学博物館で実施された新たな視点から剥製コレクションをとらえようとするこの展示に加え、PLAY!MUSEUMならではの演出がたっぷりと込められた本展。ヒトも含めた「どうぶつ」という存在をあらためて見つめることで、それぞれの豊かな個性を比較しながらそのユニークさを楽しむことができるだろう。

 なお、本展は「ながら聞き」をすることができる音声ガイドも導入されている。動物の体毛やしっぽのようなものがついたポーチに入っているので、こちらを身につけて展覧会を巡るのもおすすめだ。

展示風景より