2025.8.1

今週末に見たい展覧会ベスト13。パウル・クレー、瀬戸内国際芸術祭の夏会期、江戸絵画から大竹伸朗まで

今週閉幕する/開幕した展覧会のなかから、とくに注目したいものをピックアップしてお届け。なお、最新情報は各館公式サイトを参照してほしい。

「大竹伸朗展 網膜」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館)展示風景より
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もうすぐ閉幕

「あざみ野こどもぎゃらりい2025 ふしぎのでいりぐち」(横浜市民ギャラリーあざみ野

 横浜市民ギャラリーあざみ野で、「あざみ野こどもぎゃらりい2025 ふしぎのでいりぐち」が開催されている。会期は8月3日まで。

 「あざみ野こどもぎゃらりい」は、毎年夏休み期間に開催する親子で楽しむことができる展覧会。今日的なテーマをやさしく解説しながら、価値観の多様さを展示やワークショップ等を通して楽しく伝えることにより、次世代を担う子どもたちだけでなく大人も楽しむことができる内容となっている。

 19回目となる本展では「ふしぎのでいりぐち」と題し、架空の都市に住む生き物や、大きな耳の形をした装置など、たくさんの不思議でできた4組のアーティストによる作品を紹介。作品をじっくり観察し、体験することを通して、「わたし」以外の誰かや何かに思いを巡らせる内容となっている。

会期:2025年7月25日~8月3日
会場:横浜市民ギャラリーあざみ野
住所:神奈川県横浜市青葉区あざみ野南1-17-3 アートフォーラムあざみ野内
電話:045-910-5656
開館時間:10:00~16:00(8月3日は〜19:00)
休館日:7月28日
観覧料:無料

「夜明けの荒野を走ってー池口史子 × 碓井ゆい展」(堺屋太一記念 東京藝術大学 美術愛住館)

 東京藝術大学キュレーション教育研究センターが、洋画家・池口史子と現代美術作家・碓井ゆいによる展覧会を、池口がかつて生活し、創作活動を行った美術愛住館で開催している。会期は8月3日まで。

 池口史子は、1960年代に東京藝術大学で油画を学ぶ。作家・経済評論家の堺屋太一の妻で、1988年にアメリカ北西部とカナダの国境沿いの小麦の穀倉地帯を堺屋と旅した。そこで目にした風景との出会いを機に作風を一新し、90年代に独自の表現を確立。また、2012年には女性洋画家として初めて日本藝術院会員となった。いっぽう、碓井ゆいは、社会や歴史の見過ごされがちな事象を、丹念なリサーチを通して掘り起こし、刺繍やパッチワーク、アップリケなど手芸を使った作品を中心に発表してきた。

 本展に際して、碓井は、池口と同時代を生き、90年代に池口の個展に触れてキルトによる創作を本格化させた、とある女性の物語を展開する。本展では、その女性が訪れた架空の池口の個展会場として、1階ギャラリーを中心に池口の画業の転機となった90年代の作品を展示。また、3階と4階の元居住スペースとアトリエでは、物語のなかで生み出されたキルト作品が碓井によるテキストとともに展示されている。

会期:2025年7月4日~8月3日
会場:堺屋太一記念 東京藝術大学 美術愛住館
住所:東京都新宿区愛住町2-5
電話:03-6709-8895
開館時間:11:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月、火、水、木(ただし、7月21日は開館)
観覧料:無料

「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」(静岡市美術館

パウル・クレー 赤、黄、青、白、黒の長方形によるハーモニー 1923 パウル・クレー・センター

 静岡市美術館で「パウル・クレー展 創造をめぐる星座」が8月3日まで開催されている。本展は全国巡回の最終会場となっている。兵庫会場での会場レポートはこちら

 スイス生まれの画家パウル・クレー(1879〜1940)は、クレーの作品を売り出した画廊の販売戦略に用いられ、孤独に瞑想する芸術家としてのイメージを広めた。しかしながら、同時代を生きたほかの前衛芸術家たち同様、クレーもまた、仲間たちと刺激を与えあったり、夢を共有したりしながら、困難な時代を生き抜いた。

 本展は、スイス・ベルンのパウル・クレー・センターの学術協力のもと、同センター、バーゼル美術館、日本各地の美術館から集めたクレー作品約60点を核に、カンディンスキー、ピカソ、ミロなど同時代の芸術家たちの作品を加えた約110点で、クレーの生涯にわたる創造の軌跡をたどる。クレーを取り巻く社会的な状況も視野に入れることで、多くの人や情報が構成する星座=コンステレーションのなかでクレーをとらえ直す。

会期:2025年6月7日~8月3日
会場:静岡市美術館
住所:静岡県静岡市葵区紺屋町17-1 葵タワー3階
電話:054-273-1515
開館時間:10:00~19:00 ※展示室への入場は閉館30分前まで
休館日:月(ただし、7月21日は開館)、7月22日
観覧料:一般 1600円 / 大学・高校生、70歳以上 1100円 / 中学生以下、障がい者手帳等をご持参の方および必要な付添の方原則1名 無料

「広がる屏風、語る絵巻」(細見美術館

 京都・岡崎の細見美術館で「広がる屏風、語る絵巻」が開催されている。会期は8月3日まで。

 「屏風」は風よけや間仕切りとして使用された実用性の高い調度。空間を彩る美術品として絵師たちによって絵が描かれ、様々な画題や様式による屏風絵が展開した。「絵巻」は、巻物(巻子)形式の絵画で、観者が自ら開き、巻き進めながら見るもの。コマ割りされた絵を連続させることで空間の移動や時間の推移を表現できることから、物語性のある主題が多く描かれた。後世に切断され、掛軸となった「断簡」も数寄者たちに賞玩されてきた。

 本展では、細見コレクションを中心に、空間に広げて鑑賞した屏風と、手許で展開して楽しまれた絵巻を紹介。豊臣秀吉の花見行列を描いた《豊公吉野花見図屏風》のほか、室町幕府第11代将軍・足利義澄が愛蔵していた《硯破草紙絵巻》など、異なる形式の絵画の特質に触れるとともに、個々の作品の魅力を堪能できる。

会期:2025年5月24日~8月3日
会場:細見美術館
住所:京都府京都市左京区岡崎最勝寺町6-3
電話:075-752-5555
開館時間:10:00~17:00
休館日:月(ただし、祝日の場合は翌火)
観覧料:一般 1800円 / 学生 1300円

磯崎隼士「Beneath the Tree 木の下」(光の美術館

 山梨県の清春芸術村内にある光の美術館で、磯崎隼士による個展「Beneath the Tree 木の下」が8月3日まで開催されている。

 磯崎は1994年生まれ。2020に東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻を修了した。主な個展に「《どうぞお元気で《お幸せに《こんにちは《」(2023、Knot Corner)、「今生」(2021、WHITEHOUSE)、「あの鳥のように」(2019、CAPSULE)、「台所」(2016、Gallery Conceal Shibuya)、「自己埋葬行為」(2024、foam contemporary)。

 本展は、過去作品の展示に加え、会期中も滞在制作を続けながら、展覧会を完成させていく内容となっている。いずれ劣化し破損していく運命にある物事に対し、様々なメディウムをもちいて、作品というかたちで独自の表現を試みている。

会期:2025年5月3日~8月3日
会場:光の美術館
住所:山梨県北杜市長坂町中丸2072
電話:0551-32-3332(清春芸術村)
開館時間:10:00~17:00(入場は16:30まで)
休館日:月
観覧料:一般 1500円 / 高大生 1000円 / 中学生以下無料

「イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~」(東京国立博物館

イマーシブシアター会場写真

 東京・上野の東京国立博物館で、東博×NHK スペシャルプロジェクト「イマーシブシアター 新ジャポニズム ~縄文から浮世絵 そしてアニメへ~」が8月3日まで開催されている。会場レポートはこちら

 はるか1万年以上前から、日本の風土の中で独自の美意識が受け継がれてきた。本展は、NHKの高精細映像と技術を結集したイマーシブシアター「新ジャポニズム」と題して、東京国立博物館所蔵の国宝や重要文化財を中心にした日本文化のタイムトラベルを堪能できる。

 会場では、縄文土器から絵巻、鎧兜から手塚治虫、高畑勲、細田守のほか、名作アニメも登場。高さ7メートルの巨大モニターで鑑賞する。なお、本展は映像展示のため、作品の展示はない。

会期:2025年3月25日~8月3日
会場:東京国立博物館
住所:東京都台東区上野公園13-9
電話:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:9:30~17:00(金土、5月4日、5月5日、7月20日は〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
休館日:月、5月7日、7月22日(ただし、4月28日、5月5日、7月21日は開館)観覧料:一般 2000円 / 大学生 1200円 / 高校生 800円 / 中学生以下無料

今週開幕

「浅間国際フォトフェスティバル2025 PHOTO MIYOTA」(MMoP)

PHOTO MIYOTA 2024の展示風景

 長野県・御代田町のMMoPで「浅間国際フォトフェスティバル2025 PHOTO MIYOTA」が開催される。

 浅間国際フォトフェスティバルは、2018年にスタートし、コロナ禍の休止期間を経て今年で6回目を迎える。2025年度のテーマは「Unseen Worlds まだ見ぬ世界へ」。このテーマのもと、世界中の写真家による個性豊かな作品が一堂に会す。

 屋外型の写真フェスティバルならではの大型展示や、広い敷地を活かしたユニークな展示手法など、御代田の自然のなかを散策しながら、屋内外に展開される作品を鑑賞することができる。

会期:2025年8月2日~9月30日
会場:MMoP
住所:長野県北佐久郡御代田町大字馬瀬口1794-1
開館時間:10:00~17:00(屋内展示の最終入場は〜16:30)
休館日:水(8月13日は開館)(屋外展示は自由に鑑賞可能)
観覧料:一部有料

「瀬戸内国際芸術祭(夏会期)」(瀬戸内各所)

 直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島など瀬戸内の島々で「瀬戸内国際芸術祭2025」。その夏会期が8月1日に開幕した。

 本アートプロジェクトは、3年に1度開催される現代アートの祭典で、約100日間の会期は、春・夏・秋の3シーズンに分かれていて、季節ごとに瀬戸内の魅力が体験できる。来訪者はアートを道しるべに島々を巡りながら、アーティストや地域住民、ボランティアサポーターと交流し、瀬戸内の持つ美しい景観や自然、島・会場の歴史、文化、生活、産業、食の魅力に出会うことができる。

 瀬戸内国際芸術祭は「海の復権」をテーマに掲げ、美しい自然と人間が交錯し交響してきた瀬戸内の島々に活力を取り戻し、瀬戸内が地球上のすべての地域の「希望の海」となることを目指している。今回から新たに志度・津田エリア、引田エリア、宇多津エリアが加わる。また直島では今年5月に開館した「直島新美術館」も会場となる。

会期:2025年4月18日~11月9日
会場:直島、豊島、女木島、男木島、小豆島、大島、犬島ほか
住所:香川県高松市サンポート8(高松港)
開館時間:会場によって異なる
休館日:会場によって異なる
観覧料:一般 5500円 / 16〜18歳 2500円(要身分証) / 15歳以下鑑賞無料(一部作品、施設を除く)1シーズン(春・夏・秋)パスポート一般 4500円

「開館30周年記念 未来/追想 千葉市美術館と現代美術」(千葉市美術館

 1995年に開館し、今年で30周年を迎えた千葉市美術館。その着工時より継続して収集されてきた現代美術のコレクションから約180点を精選し、戦後美術の多様な展開をたどる「開館30周年記念 未来/追想 千葉市美術館と現代美術」が開催される。会期は8月2日〜10月19日。

 コレクションは美術館の核であり、活動の原動力といえる。近世から現代、房総ゆかりの作品まで幅広い時代、表現の収集によって体系化されてきた当館のコレクションは、その独自性と重要性が高く評価されてきた。また、同館では開館当初より収蔵作品に光を当て、国内外の社会状況と密接に関係し今日に至る現代美術を、展覧会において紹介してきました。1996年の開館記念第2弾「Tranquility―静謐」展から本年の「ノック ノック!千葉市美術館をたのしむ4つの扉」展まで、現代美術に関連する展覧会は120を数える。

 コレクションの収集と活用による新たな価値の創造を担う文化芸術の拠点として、本展が過去を振り返り、これからを思い描く機会が目指される。

会期:2025年8月2日〜10月19日
会場:千葉市美術館
住所:千葉市中央区中央3-10-8
電話番号:043-221-2311
開館時間:10:00〜18:00(金・土〜20:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月(祝日の場合は翌火が閉室)
料金:一般1500円 / 大学生1000円 / 高校生以下無料

「弓指寛治 不成者:現代アートが描く義勇軍」(水戸市内原郷土史義勇軍資料館)

弓指寛治 香坊へ通った 2025

 水戸市内原郷土史義勇軍資料館で、戦後80年企画展「弓指寛治 不成者:現代アートが描く義勇軍」が開催される。会期は8月1日~10月26日。

 弓指寛治は元義勇軍隊員を祖父に持ち、戦争や慰霊をテーマに社会や歴史が生んだ不条理を鋭く表現し続けている。本展は、元隊員の市川力三(1924〜95、三重県生まれ)の手記をもとにした完全新作約50点を展示する。

 戦後80年を迎え、戦争の記憶が失われつつあるいま、現代アート×義勇軍という新たな試みにより、かつて満蒙開拓青少年義勇軍内原訓練所のあった内原の地から、忘れてはならない戦争の記憶と平和の大切さを発信する。また、資料館と作家が共に文化を発信し、収益につなげるため、全出展作品をふるさと納税の返礼品とする試みも同時に行う予定だ。

会期:2025年8月1日~10月26日
会場:水戸市内原郷土史義勇軍資料館
住所:茨城県水戸市内原町1497-16
開館時間:9:00~16:45
休館日:月
観覧料:無料

「みること、つくること、つながること 『Museum Start あいうえの』12年と現在地」(東京都美術館

 東京都美術館で「アート・コミュニケーション事業を体験する 2025 みること、つくること、つながること『Museum Start あいうえの』12年と現在地」が開催される。会期は7月31日~8月10日

 同館は2012年度のリニューアルを機にアート・コミュニケーション事業をスタート。一般公募のアート・コミュニケータをはじめとする様々な人々とともに、障害の有無や年齢に関わらず、すべての人に開かれた「アートへの入口」となることを目指し、10年以上にわたって様々な活動を行ってきた。23年度より本事業をふりかえり、より広く発信するため「アート・コミュニケーション事業を体験する」を展覧会形式で開催している。

 3年目となる本年は、ミュージアムで創発される協働的な学びに注目し、多様な人々が作品との対話を介してつながりを育む営み、文化への関心から始まる社会参加について考えていく。本展では、他者や文化財との関わりを大切に、制作をつづける3組の作家を紹介。また上野公園の文化施設が連携し、2013年より12年にわたって展開している「Museum Start あいうえの」のアーカイブ展示や、記録映像の上映、子供も大人も楽しめる参加型のワークショップなどを実施する。

会期:2025年7月31日~8月10日
会場:東京都美術館
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話:03-3823-6921
開館時間:9:30~17:30 ※入室は閉室30分前まで
休館日:8月4日
観覧料:無料

「愛と平和の江戸絵画」(岡田美術館

 神奈川・箱根の岡田美術館で「愛と平和の江戸絵画」が開催される。 

 江戸時代は、徳川家康が幕府を開いた1603年から終焉を迎える1867年まで、約260年もの長きにわたり平和の続いた時代だった。安定した政情のもと経済が繫栄し、多様な文化が育まれ、美術においては幅広いジャンルと表現が誕生した。 

 本展は「愛」と「平和」というふたつのテーマから江戸時代の絵画を紹介。泰平の世を謳歌する人々や、穏やかな日常を描いた風俗画、親しみをこめて描かれたいきものたち、家族や恋人など愛する人への想いが伝わる作品の数々を展示する。また83年ぶりに再発見された伊藤若冲の 《孔雀鳳凰図》も展示される。

会期:2025年7月31日~12月7日
会場:岡田美術館
住所:神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷493-1
電話:0460-87-3931
開館時間:9:00~17:00 ※入場は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
観覧料:一般・大学生 2800円 / 小中高生 1800円

「大竹伸朗展 網膜」(丸亀市猪熊弦一郎現代美術館

展示風景より

 香川・丸亀にある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館で、特別展「大竹伸朗展 網膜」が開幕した。会期は11月24日まで。

 大竹伸朗は、1988年に宇和島市に活動の拠点を移して以来、35年以上この地で制作を続けてきた。活動の初期段階から取り組んできた「網膜」シリーズの新作・未公開作を中心に、「網膜」に接続する多様な作品群が谷口吉生建築の展示空間に展開される。

 さらに様々な関連プログラムの実施も予定され、大竹の現在地や今後の展開を理解する機会となるだろう。

会期:2025年8月1日~11月24日
会場:丸亀市猪熊弦一郎現代美術館
住所:香川県丸亀市浜町80-1
電話:0877-24-7755
開館時間:10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月、9月16日、10月14日、11月4日(ただし、8月11日、9月15日、10月13日、11月3日、11月24日は開館)
観覧料:一般 1500円 / 大学生 1000円 / 高校生以下 無料