EXHIBITIONS

宇宙からの音響

2025.04.24 - 08.31

草間彌生 ピンク・ドッツ──星の墓場で眠りたい 1993-1994 アクリル、キャンバス 388 × 1042.4 cm ©YAYOI KUSAMA

 草間彌生美術館で、草間彌生の病に着目した展覧会「宇宙からの音響」が4月24日より開催される。

 草間は幼い頃から幻覚や幻聴に悩まされており、その精神疾患はその創作活動に多大な影響を及ぼしている。1950年代、草間は自らのオブセッションに駆り立てられるように膨大な数のドローイングを描き、作家として躍進する契機を得る。57年の渡米後は、水玉や網目などの無限に反復するパターンですべての存在を覆いつくし、自らもその世界へと埋没していく「自己消滅」の儀式ともいうべき作品群に取り組んだ。それは心理的な病理からの救済への願いであると同時に、ハプニングなどを通じて不条理な抑圧から社会を解放しようとする意図につながるものでもあった。

 しかし、心身の不調によって帰国した後の1970年代後半から80年代にかけては、精神科病院の病室でコラージュや色紙といった小作品を数多く制作するようになる。その後、複数の画面にわたる絵画や巨大なバルーンなど、彼女の作品はエンヴァイラメント・サイズへと拡大。草間のいう「自己消滅」とはもはやアーティスト個人の内面の問題ではなく、荘厳な「宇宙からの音響」のさなかに身を置くような感覚へと人々を誘わずにはおかないものといえるだろう。

 本展では、草間の芸術の根源ともいえる病に着目し、初期から現在に至るまでの多様な作品群および関連資料を展示。宇宙の果てまでも増幅していく草間の豊饒なる創造力の所産を見ることができる。