2025.12.15

CCBTが原宿にリニューアルオープン。アートとデジタルテクノロジーの新たな活動拠点に

アートとデジタルテクノロジーを通じて、人々の創造性を社会に発揮するための活動拠点「シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]」が渋谷から原宿に移転。12月13日にリニューアルオープンした。

文=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部) 写真提供=シビック・クリエイティブ・ベース東京 [CCBT]

©シビック・クリエイティブ・ベース東京
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CCBTが原宿を拠点に再始動

 アートとデジタルテクノロジーを通じて、人々の創造性を社会に発揮するための活動拠点「シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]」が、渋谷から原宿に移転。12月13日にリニューアルオープンした。

 CCBTは、2022年に渋谷で開所以来、アーティスト、デザイナー、エンジニア、研究者など、多様な専門性や視点を持つプレイヤーが集う場を創出。5つのコアプログラム「アートインキュベーション」「ショーケース」「ワークショップ」「キャンプ」「ミートアップ」を軸に、参加者との共創を通じて、東京という都市を舞台に様々な創造的実験に取り組んできた。

 移転先は、竹下通りにほど近い商業エリアの一角。若者文化の発信拠点でありながら、子供から高齢者まで幅広い層がアクセスしやすいこの場所を、「どこにでもある日常に接続しやすい場所」ととらえ、引き続き発信と共創を実践していくという。

 このリニューアルオープンに際し、CCBTのクリエイティブディレクターを務める小川秀明は次のようにコメントしている。「CCBTはギャラリーでも美術館でも、研究機関でもない。アート×テクノロジーでよりよい街を目指すことをミッションに、市民とともに新たな未来をプロトタイプしていくための文化拠点として活動を展開していく。今後の動きもぜひ楽しみにしてほしい」。

小川秀明(CCBTクリエイティブディレクター、アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ芸術監督) ©シビック・クリエイティブ・ベース東京

こけら落としは、SIDECOREによる特別展

 今回のリニューアルオープンにあたってCCBTは、「都市は、想像力を要求する。」をキーワードに、展示、公演、トーク、ワークショップなど、様々なイベントを展開している。

 まず、こけら落としとして開催されるのが、アーティスト・ユニット SIDE COREによる特別展「新道路」(〜2026年1月25日)だ。CCBTの全館を舞台に展開される本展では、異なる価値観や社会制度など、あらゆる境界を「移動」という行為によって横断してきたSIDE COREが、それらを物理的に結ぶ「道路」に着目し、新作の映像インスタレーション作品として提示している。新たな拠点における初の展覧会だからこそ実現した導線設計にも注目したい。

SIDE CORE(左から、松下徹、西広太志、高須咲恵)
SIDE CORE 特別展「新道路」展示風景より。今回の展示は、現在金沢の21世紀美術館で開催されている個展「SIDE CORE Living road, Living space /生きている道、生きるための場所」にも通じている ©シビック・クリエイティブ・ベース東京
SIDE CORE 特別展「新道路」展示風景より ©シビック・クリエイティブ・ベース東京
SIDE CORE 特別展「新道路」展示風景より ©シビック・クリエイティブ・ベース東京

 またCCBTでは、「音(サウンド)」を探求するプロジェクト「Sound Atlas(サウンド・アトラス)」を新たに始動。第一弾となる今回は、響き、漏れ、伝播といった「音」の本質をテーマに据え、ライブやパフォーマンス、DJ、インスタレーション、トークなど、多分野とのコラボレーションを通じて新たな可能性を探求していくものとなる。共同キュレーションには小松千倫(音楽家、美術家、DJ)を迎え、12月13日には実践イベント「Sound Atlas #1 極地からの音」も実施された。

小松千倫(音楽家、美術家、DJ) ©シビック・クリエイティブ・ベース東京
「Sound Atlas #1 極地からの音」タイムテーブル ©シビック・クリエイティブ・ベース東京

コアプログラム「アートインキュベーション」も4年目に突入

 CCBTのコアプログラムのひとつである「アート・インキュベーション・プログラム」も今年で4年目。今後、この新たな拠点では、2025年度アーティスト・フェローに選ばれた上田麻希、岸裕真、土井樹、藤嶋咲子、山内祥太の5組が、これからの社会や個人の在り方を考えるための「これからのコモンズ」をテーマに、プログラムを展開していく予定となっている。

「アートインキュベーション」参加アーティスト。左から土井樹、岸裕真、上田麻希 ©シビック・クリエイティブ・ベース東京
「アートインキュベーション」参加アーティストより、藤嶋咲子 ©シビック・クリエイティブ・ベース東京

 このほかCCBTでは、原宿移転にあたって開発された、都市の風景をインクにして描くツール「Urban Ink」を使ったワークショップ(12月20日・21日)を実施予定。また、オーストリアの「アルスエレクトロニカ」と連携した体験型インスタレーション「Citizen Manifesto」も、原宿の街なかで展開された(〜12月14日)。

 アートとデジタルテクノロジーによる様々な実践を通じて、都市と創造性の関係をあらためて問い直すことを試みるCCBT。拠点を新たに、今後どのように街と呼応し、実践を社会へと開いていくのか。その展開に引き続き注目したい。

ワークショップ「Urban Ink —街がインクになる」 ©シビック・クリエイティブ・ベース東京
体験型インスタレーション「CCBTxARS ELECTRONICACitizen Manifesto」 ©シビック・クリエイティブ・ベース東京