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2025.4.23

日本科学未来館の新常設展示「量子コンピュータ・ディスコ」と「未読の宇宙」が公開。最先端の科学を身近に

日本科学未来館で、2つの常設展示「量子コンピュータ・ディスコ」「未読の宇宙」が新たに公開。また、2011年に公開された常設展示「ジオ・スコープ」もリニューアルされた。

文・撮影(*を除く)=三澤麦(ウェブ版「美術手帖」編集部)

「量子コンピュータ・ディスコ」展示風景より 提供=日本科学未来館(*)
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 日本科学未来館(以下、未来館)で、2つの常設展示「量子コンピュータ・ディスコ」「未読の宇宙」が新たに公開。また、2011年に公開された常設展示「ジオ・スコープ」も全面リニューアルされた。

 「量子コンピュータ・ディスコ」は、量子コンピュータのプログラミングを音楽とダンスフロアの関係に見立て、DJのような体験を通じて学べるユニークな展示だ。来場者が好きな音楽を選び、ダンスフロアで音楽を重ね合わせたり、曲を選んだりする操作を行うことで、量子力学の原理を直感的に理解することを促すものとなっている。

「量子コンピュータ・ディスコ」展示風景より。総合監修は藤井啓祐(大阪大学基礎工学研究科)
「量子コンピュータ・ディスコ」展示風景より

 展示内は、ダンスフロアを含めて4つのパートで構成。「量子コンピュータの仕組み」といった基礎から、その研究の歴史や最新の研究開発の成果までを扱っており、大人から子供まで誰もが楽しみながら量子コンピュータの領域に触れることができるものとなっている。

「量子コンピュータ・ディスコ」展示風景より

 もうひとつの「未読の宇宙」は、巨大な観測・実験装置を駆使して、研究者たちがどのように宇宙を読み解こうとしているのかを体感できる展示だ。宇宙から発せられる様々な波長の光をとらえる「多波長観測」に加え、近年では「ニュートリノ」「重力波」の観測や粒子加速器を用いた大規模実験も実施。このように、いくつかのデータを組み合わせて複合的に宇宙を理解する「マルチメッセンジャー天文学」を紹介し、音と映像によって展示空間全体が囲まれることで、リアルな宇宙の姿を体感することができるものとなっている。

「未読の宇宙」展示風景より 提供=日本科学未来館(*)。総合監修は梶田隆章(東京大学宇宙線研究所)
「未読の宇宙」展示風景より 提供=日本科学未来館(*)

 また、科学や理数分野を専門としない人にも関心を持ってもらうための仕掛けとして、展示のプロローグには宇宙にまつわる物語の一節や詩、イラストなどを掲示しているのも特徴だ。ビジュアライズされたデータや物語を通じて、研究者が見つめる壮大な宇宙のフロンティアに触れることができるだろう。

「未読の宇宙」展示風景より 提供=日本科学未来館(*)。各体験装置には、研究者とビデオ通話をしながら理解を深められる解説映像も
「未読の宇宙」展示風景より 提供=日本科学未来館(*)

 2011年に公開されて以来親しまれてきた「ジオ・スコープ」も、「変わり続ける地球」をテーマに全面リニューアルされた。

 ジオ・スコープとは、世界の研究機関などから提供された科学データをもとに、我々人間の営みと地球との関係性を様々なテーマから読み解く常設展示だ。今回のリニューアルでは、「人間の活動」「地球の動き」「環境の変化」の3つを軸にコンテンツをアップデートし、「世界の電力消費量」や大気中の「エアロゾル濃度」など、新たに8つの最新データを収録。さらに既存の12のデータとあわせた計20のデータから、人間と地球のつながりについて学ぶことができるものとなっている。

 視覚的にわかりやすい体験画面や展示端末のデザインも大きなリニューアルポイントだ。また、設置される5台の端末のうち1台は、視覚情報のみならず「音」で科学データを理解し、楽しむことができるモードも搭載されている。視覚に障害を持つ方も、耳からこれらのデータにアクセスすることが可能だ。

「ジオ・スコープ」展示風景より。展示端末は地球をのぞき込む「望遠鏡(スコープ)」をイメージ

 今回のお披露目に際し、同館館長の浅川智恵子は次のように述べた。「未来館は『Miraikan ビジョン 2030』をもとに、一人ひとりが「自分のこと」として未来を考えられるよう『Life』『Society』『Earth』『Frontier』といった4つのテーマを設定しており、今回は『Earth』と『Frontier』の分野から新展示を公開した。(中略)最先端の科学を子供も大人も身近に感じていただける展示を目指したので、この展示体験が現在進行形ですすむ研究開発に興味をもつきっかけとなることを願っている」。

浅川智恵子館長 提供=日本科学未来館(*)

 なお、未来館では、来館中に知りたい情報があればすぐにアクセスできる公式アプリ「Miraikan App」を4月14日にリリース。また、常設展示の約50ヶ所に設置されたARマーカーを読み取ることで、各展示の音声やテキストが表示される「日本科学未来館アシストアプリ」も公開中だ。5月には手話による展示解説動画が追加されるため、視覚障害のある方やろう者の方々の展示体験サポートへの活用も可能になるという。