2025.4.24

福田美術館と嵯峨嵐山文華館で「万博・日本画繚乱ー北斎、大観、そして翠石ー」が開催。かつての万博出展画家たちの名作を紹介

京都の福田美術館と嵯峨嵐山文華館の二館共催により、かつて万博に出品していた日本画家たちの作品を紹介する展覧会「万博・日本画繚乱ー北斎、大観、そして翠石ー」が開催される。会期は7月19日~9月28日。

横山大観 富士図(左隻) 1945頃 福田美術館蔵 後期展示
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 京都・嵯峨の福田美術館嵯峨嵐山文華館の二館共催により、かつて万博に出品していた日本画家たちの作品を紹介する展覧会「万博・日本画繚乱ー北斎、大観、そして翠石ー」が開催される。会期は7月19日~9月28日。

葛飾北斎 砧美人図 1811~20 福田美術館蔵 通期展示

 本展は、大阪・関西万博の開催にちなんだもの。世界各国の最先端の科学や技術の粋を集めて開催されてきた万博。近代においては、美術もまた国を代表する先進的な技術だと考えられており、日本は国際的に認められるために美術もまた、近代には、日本は国際的に認められるために国の主導で積極的に出品し、日本画の大家である葛飾北斎などの作品や、現役の日本画家たちの意欲作を万博に送った。

葛飾北斎 墨堤三美人図(部分) 19世紀 福田美術館蔵 通期展示
上村松園 和楽之図 1897〜1906 福田美術館蔵 通期展示

 1900年のパリ万国博覧会では、日本画家として唯一金牌を獲得した大橋翠石をはじめ、橋本雅邦横山大観竹内栖鳳上村松園らが日本の威信をかけて意欲的に制作し、賞に輝いた。しかし多くの場合、それらは外貨獲得のために万博を開催した国でそのまま販売。現存しているものはほとんどあないが、本展はこうした画家たちの代表作に宿っていたであろう熱情と画技を紹介するものだ。

大橋翠石 瑞祥 1935〜43 福田美術館蔵 通期展示
上村松園 人形遣之図 20世紀 福田美術館蔵 後期展示

 第1会場となる福田美術館での展示は3章構成となる。第1章「万博と美術」では、ロンドン万博に展示されモネやゴッホに大きな影響を与えた葛飾北斎の肉筆浮世絵にはじまり、横山大観《富士図》(1945)といった、万博に出品し世界に挑んだ日本の画家たちの作品を振り返る。

横山大観 富士図(左隻) 1945頃 福田美術館蔵 後期展示
横山大観 富士図(右隻) 1945頃 福田美術館蔵 後期展示

 第2章「万博連覇の幻の巨匠大橋翠石の芸術」では大橋翠石を特集。1900年のパリ万博、1904年のセントルイス万博と連続して金牌に輝き、時代を代表する巨匠として知られた翠石だが、現在は美術愛好家や専門家でもほとんど作品を見たことがなく「幻の巨匠」とも呼ばれている。本章では翠石の遺族やコレクターからも借用した名品を集め、西日本初となる、計25点の翠石作品が一堂に会する大規模展示を実施する。

大橋翠石 月下猛虎図 19世紀 福田美術館蔵 通期展示

 第3章「翠石がライバル? 竹内栖鳳の芸術」では、竹内栖鳳を特集。1900年のパリ万博に出展し、翠石の金メダル受賞に衝撃を受けた栖鳳は、帰国後にそれまでの「棲鳳」の雅号の棲の字の偏を変えて「栖鳳」と名乗るようになる。パリ現地で動物園に通ってライオンを写生し、帰国後には「動物を描けばその体臭まで描く」と形容されるほどの注力を示した栖鳳の芸術世界を、《猛虎》《獅子》(ともに後期展示)といった名品とともに振り返る。

竹内栖鳳 猛虎 1930 福田美術館蔵 後期展示

 第2会場の嵯峨嵐山文華館は2章構成だ。第1章「万博と画家」は、当時の日本政府が賞を獲得し国際的な地位を高めるために、巨匠や有望作家をどのように選定して見せていったのかを取り上げる。ベテランの橋本雅邦や今尾景年、次世代の横山大観や竹内栖鳳らを比較しつつ鑑賞できる。

 第2章「当時新進気鋭の画家と翠石」は、万博で活躍した当時の新人画家のなかでも、現在は語られることが少ない大橋翠石らを特集。福田美術館と同様に、嵯峨嵐山文華館でも翠石の作品が展示されるほか、野沢如洋や下村観山の貴重な作品も見ることが可能だ。