EXHIBITIONS

小企画展

ピカソの人物画

2025.06.28 - 10.05
 国立西洋美術館で、小企画展「ピカソの人物画」が開催されている。

 20世紀を代表する芸術家パブロ・ピカソ(1881〜1973)は、何よりも「人」を描いたことで知られている。ピカソは、生と死、戦争と平和、愛と欲望といった人々を取り巻くあらゆるテーマや感情に向きあい、強い存在感を放つ人間の姿を描き続けた。本展は、ピカソの人物画に焦点をあてることで、この芸術家の核心に迫ろうとするものである。

 ピカソは、母国スペインの美術学校における写生デッサンの訓練を通して、人体を正確に把握し再現するための基礎を築いた。独学で学んだカリカチュアの手法は、ピカソの人物像におけるユーモラスな誇張や単純化、デフォルメの表現に生かされる。いっぽうキュビスムの発明は、理想的な人体美の伝統を根底から覆し、人物画を新たな造形実験のための場へと転換させた。

 ピカソの人物画の主題は、初期には社会から疎外された人々、両大戦間には古典古代、晩年には「画家とモデル」など多岐に及ぶが、生涯にわたり中心的な位置を占めたのは肖像画だ。それらの多くは従来のような注文制作ではなく、家族や友人、恋人たちを自由に描いたものであった。ピカソはとりわけ、もっとも身近な存在であった女性たちを、技法やスタイルを変えながら何度も取り上げている。そして1枚の絵には集約できないひとりの人物の多面性や女性たちに向けられた自身の変化する感情を、一連の肖像画を通して表現した。

 本展は、近年多数の寄託作品により拡充された同館のピカソ・コレクションをまとめて紹介。さらに、国内の美術館の所蔵品若干数を加えた絵画や素描、版画、資料など合計34点を通して、画家の青年期から晩年に至る人物画の表現と主題、その革新性と多様性を見ることができる。