浜名一憲、西條茜、ピーター・シア、上田勇児「Surface and Signal」

　BLUM 東京で、浜名一憲、西條茜、ピーター・シア、上田勇児による展覧会「Surface and Signal」が開催されている。

　出展作家たちのそれぞれの実践は、形式上の明瞭さ、素材に対する率直な眼差し、そして「意図」と「偶然」のあいだに存在する繊細な感受性を共有している。本展は、絵画と陶という異なるメディウムに内在する構造的な制約のなかで、脆さや造形の痕跡、静かなラディカリズムを許容する大らかさを内包させながら、各作家がそれぞれの実践にどのように取り組んでいるかに焦点をあてる。

　本展で紹介しているピーター・シアによる絵画作品は、作家の実践に通底する詩的な感覚を協調するように、文化や美術史の様々な瞬間の横断的な参照に根差した視覚的記憶を喚起させる。その筆致は《Current》（2025）に見られるように、作家の手の痕跡と絵具の物質性を同時に強調しながら、浜名一憲、西條茜、上田勇児による陶芸作品が持つ素材性や複雑な釉薬の層と響きあう。

　浜名一憲の壺は、灰色の粘土を練り上げてコイル状に成形し、それを手で積み重ねて形づくられている。作品が有する物質性、そして刷毛によって彩色された釉薬が施された表面には、掌や指の痕跡を見てとることができる。力強く大ぶりな円形の壺作品には、人の手による無意識の痕跡や不完全さ、制作過程における偶発的な状況によって刻まれた微細なディテールに満ちたものとなっている。

　浜名と同様に、意図された偶然性のなかにある崇高な佇まいに目を向ける上田勇児は、「美しい不完全さ」を重んじる信楽焼の伝統に自らの実践を重ねている。作品は、粘土の層の上に石膏を重ねることで、ひび割れや剥離があらかじめ設計された表面から、溢れ出すように現れる鮮やかな釉薬が特徴的だ。さらに、江戸時代から日本で用いられてきた鋳込みの技法も取り入れられている。

　西條茜は、身体と共鳴し、身体のための空間を創出するような陶のフォルムを制作してきた。その作品群は、パフォーマーが作品に息を吹き込んだり、身体的に作用したりするパフォーマンスを通じて、人々をわかつ「伝達」と「知覚」の断絶された知りえぬ空間に目を向けさせる。精緻に成形されたフォルムに巧みに釉薬を施した作品群は、本展に参加するほかの作家たちと同様に、本質的な人間の営みの不秩序さを前に、なおも「完璧さ」を探求しようとする緊張関係が示唆的に表される。