2026.4.3

ソウルで「ART OnO 2026」が開幕。独自の試みを続ける新進アートフェアの現在地

韓国のソウル貿易展示コンベンションセンター(SETEC)で、第3回目となる国際アートフェア「ART OnO 2026」が開幕した。会場の様子をレポートする。

文・撮影=大橋ひな子(編集部)

「ART OnO 2026」の会場風景より
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 韓国のソウル貿易展示コンベンションセンター(SETEC)で、国際アートフェア「ART OnO 2026」が開幕した。会期は4月5日まで。

 「Art One and Only」を意味する「ART OnO」は、作品売買の場を超え、美術館や財団といった非営利機関との対話を重視するブティック型のアートフェアだ。マーケット主導という既成概念を覆す試みを、2024年の初回から継続している。

 第3回となる今回もソウル貿易展示コンベンションセンター(SETEC)で開催され、韓国、ドイツ、ルーマニア、フィンランド、スイス、タンザニアなど世界各都市から計35団体が参加した 。本フェアの大きな特徴は、アジアで紹介される機会の少なかった地域のギャラリーが多数参画している点にある。

「ART OnO 2026」の入り口。今年も昨年同様ソウル貿易展示コンベンションセンター(SETEC)で開催

 タンザニアのダルエスサラームを拠点とするRangi Galleryは、今回がアジアのアートシーンへの初披露となる 。現代アフリカ美術の地域的文脈から生まれるアーティストを紹介しており、会場にはタンザニア出身の女性作家3名の作品が並ぶ 。ディレクターのローナ・マシバ・アルボーは、「ヴェネチア・ビエンナーレ2026」のタンザニア館のキュレーターも務めており、創設者ノ・ジェミョンの熱意と韓国のアートシーンへの期待により参加を決定したという。

 ブースでは、医師の傍ら制作を始めた新進気鋭のテレジア・マサウェや、今年のヴェネチア・ビエンナーレにも選出されているヴァレリー・アシームウェ・アマニの作品を展示。ローナは、ヴァレリーが世界的に認知される前段階として、本フェアへの出展を重要な節目と捉えている。

Rangi Galleryブースの様子

 ルーマニアから初参加したJECZA Galleryは、ゲンティ・コリニら7名のアーティストによる絵画や彫刻を展示。ディレクターのアンドレイ・イェチャは、ルーマニア出身者に加え、アルバニアやフランスなど多国籍な作家を混成させた構成を特徴として挙げている。

JECZA Galleryブースの様子

新しい試みを求める若いコレクターとの出会い

 フィンランドのMakasiini Contemporaryは、本来ビデオ等のタイムベースド・メディアに強みを持つが、今回は平面作品を中心に紹介 。また、ラトビアの首都リガとソウルに拠点を置くLazy Mikeは、ロシア周辺国の現代美術をテキスタイルや彫刻など多様なメディアで提示した。

Makasiini Contemporaryブースの様子
Lazy Mikeブースの様子

 ドイツのGalerie Zinkは3回連続の参加となる。オーナーのミヒャエル・ツィンクは、本フェアに「新しい試みを求める若いコレクター」が集まる点に言及。会場では奈良美智の初期作から若手作家までを幅広く扱っている。ミヒャエルは、ここで出会ったコレクターと毎年顔をあわせ、継続的な関係を築いていく機会は、同ギャラリーにおいて極めて貴重なものだと語る。

Galerie Zinkブースの様子

 日本からはAISHOMISAKO&ROSENが参加。MISAKO&ROSENはアメリカのバーモント州を拠点とするアーティストのウィル・ローガンを単独紹介し、本フェア限定のタブロイド紙と写真のエディションも販売 。また、Gana Artは日本人アーティスト、川内理香子を個展形式で構成し、全6点の作品を展示している。なおソウルにある同ギャラリーでは、同時期に川内の個展が開催されている。

MISAKO&ROSENブースより、ウィル・ローガンのタブロイド紙と写真のエディション
Gana Artブースの様子

アートについて深く語り合えるプラットフォームを築く

 そして本フェアのもうひとつの特徴は、商業ギャラリーと非営利機関の共存である。現代美術の展示や研究を支援してきた非営利機関であるSONGEUN(ソンウン)は、白壁のない開放的な空間でキム・ジソンのインスタレーションを、また別のブースではアン・ジョンジュの映像作品を展示。全南道立美術館は、地域の歴史と記憶を探求するグォン・スンチャンらの作品を紹介している。

SONGEUNブースより、キム・ジソンのインスタレーション作品
SONGEUNブースより、アン・ジョンジュの映像作品
全南道立美術館ブースの様子

 さらに今回中国からもいくつかの団体が初参加している。fibre/áunn museumは、上海拠点の作家ジャン・インによるインスタレーション作品を展開している。また、マイケル・ホゥアンらが設立したX Museumも初参加している。

fibre/áunn museumブースの様子
X Museumブースの様子

 ファウンダーのノ・ジェミョンは、本フェアについて「『体験』を売る場でありたい」と述べ、いまは収益よりもブランディングや独自性を優先する方針を示す。小規模ながら多国籍な顔ぶれや非営利団体との協働を実現している背景には、「アートについて深く語り合えるプラットフォームを築きたい」という明確な意志がある。

 今回8つの非営利団体が参加したが、次回に向けて多様な展開を計画し、すでに動き始めているという。誕生間もないフェアでありながら、その独自性に賛同する者とともに進化を続ける今後の動向を注視したい。