2026.3.27

「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」 が開館へ。こけら落としとなる「ぐるぐる展—進化しつづける人類の物語」も開幕

東京・港区のJR高輪ゲートウェイ駅と直結している「TAKANAWA GATEWAY CITY」内に、複合型ミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」が3月28日に開館する。こけら落としとなる展覧会「ぐるぐる展—進化しつづける人類の物語」の開幕を前に行われた内覧会の模様をレポートする。

文・撮影=安原真広(編集部)

開館記念特別展「ぐるぐる展 進化しつづける人類の物語」より、大型バルーンの《大きなUZU》。キャラクターデザインはnanaoが務めた
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 東京・港区のJR高輪ゲートウェイ駅と直結している「TAKANAWA GATEWAY CITY」。昨年オープンした本施設内に、地上6階地下3階の複合型ミュージアム「MoN Takanawa: The Museum of Narratives(以下、MoN Takanawa)」が新たに開館する。開館日が3月28日。

MoN Takanawaの屋上からの眺望。右の建物が同時オープンする商業施設「リンクピラー2」

 TAKANAWA GATEWAY CITYは、すでに開業している「リンクピラー1 NORTH/SOUTH」と、今回開業する「リンクピラー2」「MoN Takanawa」、そして住居棟の「TAKANAWA GATEWAY CITY RESIDENCE」で構成されており、このなかで「MoN Takanawa」は文化創造の拠点として「100年先へ文化をつなぐ」という目標を掲げている。館名の「MoN(モン)」には、「門」と「問」という2つの意味が重ねられ、多様な「物語」に触れることで生まれる「問」を起点に、未知の世界や自身の新しい可能性を開く「門」を来館者に提供することが目指すとされている。

 総合プロデューサーを放送作家/脚本家の小山薫堂が、アーティスティック・ディレクターを内田まほろが務める。MoN Takanawaでは、年に2回、全館共通の「シーズンテーマ(=問い)」を掲げ、国内外のパートナーと伝統、アート、テクノロジー、⾃然科学、エンターテインメントなど分野横断型のプログラムを展開する。9月まで掲げられるオープニングのシーズンテーマは「Life as Culture ― ⽣きるは、ブンカだ」。

多彩な展示を実現する自由度の高い空間設計

 特徴的なスパイラル状の建物は、隈研吾建築都市設計事務所が外装デザインを務めた。⽊材をふんだんに⽤いながら、日本の在来種を中心とした植栽が外周に配されている。館内には、約1500平方メートルの展⽰空間「Box1500」、ステージ全⾯にLED を備えたシアター「Box1000」、約100畳の畳の空間「TATAMI」といった施設が設けられ、テーマに即した様々なイベントが行われる予定だ。

隈研吾建築都市設計事務所が外装デザインを担ったMoN Takanawaの外観

 高輪ゲートウェイ駅からペデストリアンデッキで直接接続している2階のエントランスロビーには、インフォメーションとともに物販ブースが設けられた。開館を記念し、ここには「未来文化の門」と名づけられたやぐらが設置され、各界の著名人からのメッセージが掲示されている。

エントランスロビーとBox300。人々が行き交う往来としての役割も果たす
32人の著名人のメッセージが掲げられた「未来文化の門」
Box300で開催されている「ひらけ モン!展 はじまりのはじまり」。MoN Takanawaの建築の思想や設計などを資料展示から知ることができる

 このロビーと隣接する約300平米の自由度の高い展示空間「Box300」では、DJイベントや企業展示などが開催できるようになっている。開館時は「ひらけ モン!展 はじまりのはじまり」が開催されており、高輪の歴史とともに、プロジェクトメンバーや建築家・隈研吾、イギリスのデザインスタジオ・Pentagramと行った議論や試行錯誤、工事の様子などを、計画資料、スケッチ、プロトタイプ、インタビュー、映像を通して紹介している。

約100畳の畳のスペース「TATAMI」。中央で日原暢子(箏)と川村葵山(尺八)の演奏が行われていた

 開放的なエスカレーターとスロープによって、上下階の移動はシームレスにできるように意識されている。2階には「ラボ」と称する小規模な3つの展示スペースがあり、気軽に立ち寄れる展示やイベント、ワークショップを展開。4階には約100畳の畳のスペース「TATAMI」があり、オープニング企画として和楽器の演奏と茶が楽しめる「畳びらき 春うららの茶会」が開催される。

開館記念特別展「ぐるぐる展 進化しつづける人類の物語」

 5階のBox1500は、館内最大となる展示空間だ。ここではこけら落としとなる開館記念特別展「ぐるぐる展 進化しつづける人類の物語」が開催される。会期は3月28日~9月23日。

 本展は宇宙、地球、自然、伝統文化、食、人体、思考といった、人間を取り巻く多様な「ぐるぐる」に着目したものだ。「ぐるぐる」という普遍的なかたちを、アート、社会学、テクノロジー、科学、伝統文化などを横断しながら、 6章構成で紐解いていく。企画とキュレーションはMoN Takanawaの内田まほろ、斧田悠、黒木許子。

エントランスから始まる「Zone 1|World:ようこそ、ぐるぐるの世界へ」。パネルの手前で三谷純の作品3点《永遠の白河》《光の旋回》《白亜の螺旋》(すべて2026)を展示

「Zone 1|World:ようこそ、ぐるぐるの世界へ」「Zone 2|Art:ぐるぐるは美しい」

 エントランスから始まる第1章「Zone 1|World:ようこそ、ぐるぐるの世界へ」では、導入として折り紙研究を行なってきた三谷純の作品3点《永遠の白河》《光の旋回》《白亜の螺旋》を展示。本展のために紙からつくり出す「ぐるぐる」形状を、過去最大サイズとなる高さ60〜80センチほどで制作した。

東弘一郎《自連車》(2026)。定期的にモーターが作動し、ペダルがまわることでホイールの回転運動が伝達していく
児玉幸子《モルフォタワー/二つの立てる渦》(2026)。磁力によって液体が渦巻き状になっている

 第2章「Zone 2|Art:ぐるぐるは美しい」では、「ぐるぐる」の根源を問うようなメディアアートが展示される。金属加工で人が関わることで駆動する作品をつくる東弘一郎の《自連車》(2026)は、自転車のホイールの回転運動の連鎖が回転運動の原初的な伝達を表現している。磁性流体を用いた作品で知られる児玉幸子の《モルフォタワー/二つの立てる渦》(2026)は、磁性を帯びた液体が渦巻き状になりながら立ち上がっていく。

岩井俊雄「時間層」シリーズより、《時間層Ⅳ》(1990)。水の中に浮かぶ空想の生物をイメージしたというアニメーションが回転運動によって上映される
後藤映則《Heading》(2022)。各部位の動きは回転するパーツによって生まれていることがわかる

 岩井俊雄の「時間層」(1990-)シリーズは、高速で回転する3枚の透明な円盤に、プロジェクターから光を当てることで、アニメーションとして図像が現れる作品だ。また、人間の歩く姿を表現した後藤映則《Heading》(2022)は、可動を表現するために部品の回転運動が使われていることが本展のテーマと関連づけられている。

「Zone 3|City:ぐるぐる動くまちと暮らし」「Zone 4|Culture:ぐるぐると文化をつなぐ」

 第3章「Zone 3|City:ぐるぐる動くまちと暮らし」では、社会や生活を支える目に見えない「ぐるぐる」にスポットを当てる。テラダモケイ、TASKO、Gakki Lab.のコラボレーションによる、100分の1の紙の山手線が走り抜ける精緻なテラダモケイによる模型作品《山手線》や、慶應義塾大学環境情報学部脇田玲研究室による、18世紀から現代に至る世界の航路を可視化したデータビジュアライゼーション作品などが並ぶ。また、掃除や洗濯といった日々繰り返される「ぐるぐる家事図鑑」の展示など、身近な日常を再発見する展示も興味深い。

「Zone 3|City:ぐるぐる動くまちと暮らし」の建築模型用のパーツを制作するテラダモケイ、TASKO、Gakki Lab.による《山手線》
「Zone 4|Culture:ぐるぐると文化をつなぐ」で紹介される「ぐるぐる」文様を使用した古今の生活の道具。中央は「BAPE」の渦巻文様のジーンズ

 第4章の「Zone 4|Culture:ぐるぐると文化をつなぐ」では、時代を超えて継承される文化の「巡り」がテーマだ。京都の「樂家」による一子相伝の技、日本相撲協会の協力による土俵と横綱の展示、そして1万年動く時計を目指す「ロングナウ・プロジェクト」など、伝統と未来を繋ぐ多様な物語が紹介されている。

「Zone 5|Human:ぐるぐるがわたしをつくる」「Zone 6|Think:ぐるぐる考える」

 第5章「Zone 5|Human:ぐるぐるがわたしをつくる」では、指紋やつむじといった身体的な特徴から日々の習慣まで、自分自身のなかにある「ぐるぐる」を意識させる展示が続く。本展のイメージキャラクターである巨大な「UZU」のバルーンとともに、身体のシステムを支える「ぐるぐる」について考えることができる。

大型バルーンの《大きなUZU》。身体のなかの「ぐるぐる」を探る「Zone 5|Human:ぐるぐるがわたしをつくる」で展示されている
「Zone 6|Think:ぐるぐる考える」のホーダウン/siro Inc/SYGNAL/Syna Studio/池田航成による《ぐるぐるインスピレーション》。来場者の思考を促す空間

 最終章「Zone 6|Think:ぐるぐる考える」では、プロジェクションで描かれる回転運動の中に身を置きながら思考できる《ぐるぐるインスピレーション》が展示されており、本展を振り返りながら自らの思考で「ぐるぐる」と考える時間を提供。来館者は自身の内面へと問いを深めながら本展を締めくくることになる。

 また、本展は音声ガイドにも工夫が凝らされており、声優の坂本真綾が演じるキャラクター「UZU」と、岡野友佑による「メグル」が案内役となり、五感を刺激するインスタレーションや香りの演出とともに、全6ゾーンの物語をナビゲートしてくれる。

6階、屋上

 6階には「足湯テラス」「月見テラス」がある。「足湯テラス」は草木に囲まれた半屋外の空間でリラックスでき、四季折々の自然を感じながら温かい湯に足を浸しながら、来館者同士が緩やかに交流できる施設だ。「月見テラス」は江戸時代にこの地に広がっていた海岸線の風景をデザインに取り入れたテラス。水面には月の映り込みを象徴する意匠が施され、月見や花見といった季節ごとのイベントも開催される予定だ。このテラスを眺めながら、隣接するガーデンレストラン「LAUBE(ラウベ)」で食事を取ることもできる。

江戸時代の高輪の海岸線をイメージしたという「月見テラス」
「MoNファーム」。ここで日本の在来種を中心に育成をし、長期的な環境の育成を行っていく

 さらに階段を上がった最上階の屋上には、自然が息づく「MoNファーム」が広がっている。ここには季節の花々や果樹、野菜、ハーブなどが植えられた菜園があり、館を彩る樹木の多くは日本の在来種が選ばれている。

地下シアター「Box1000」

 地下3階には、全面LEDを備えたシアター「Box1000」があり、ここでは、最新のテクノロジーを駆使した映像表現や、伝統芸能と現代アートが融合したパフォーマンスなど、地下ならではの没入感あふれるプログラムが展開される予定だ。

Box1000の2階席からの眺望。演劇から映像、ライブパフォーマンスまで様々な演目に対応

 Box1000では開館記念特別公演として「MANGALOGUE(マンガローグ):火の鳥」が開催される。これは「マンガを浴びる」というコンセプトのライブパフォーマンスとなっており、手塚治虫の不朽の名作『火の鳥 未来編』を原作に、巨大LEDスクリーンとロボットアーム「鉄腕アーム」を駆使して、マンガを「みんなで体験する」物語として解釈するという。

 「TAKANAWA GATEWAY CITY」という新たな街につくられた、新たな文化施設「MoN Takanawa: The Museum of Narratives」。自由度の高いスペースと、駅と直結した利便性を兼ね備えた本施設が今後どのような催しを発信していくのか。注目していきたい。