「伊藤慶二 祈・これから」(岐阜県現代陶芸美術館)開幕レポート。90歳のアーティストのこれまでとこれからを見つめる
岐阜県現代陶芸美術館で、同地を拠点に活動する作家・伊藤慶二の個展「伊藤慶二 祈・これから」が開幕した。会期は9月28日まで。

岐阜・多治見にある岐阜県現代陶芸美術館で、同地を拠点に活動する作家・伊藤慶二の個展「伊藤慶二 祈・これから」が開幕した。担当学芸員は林いずみ。
伊藤慶二は1935年岐阜県土岐市生まれ。現在も同地を拠点に制作を続けている。武蔵野美術学校(現武蔵野美術大学)で油画を学んだ後、美濃へ戻り岐阜県陶磁器試験場に勤めた伊藤は、陶磁器デザイナー・日根野作三(1907〜1984)との出会いなどを通じて、60年代から陶芸を発表してきた。75年に独立した伊藤は、クラフト(手仕事で生産される日用品)の制作から始まり、早くから陶による立体造形の制作に取りむようになった。またその制作は、陶による造形、オブジェへと拡がるとともに、油彩、ドローイング、布の作品など多様なメディウムを取り入れながら自在に展開している。

これまでの個展に「伊藤慶二 こころの尺度」(岐阜県美術館、パラミタミュージアム、2011)、「伊藤慶二 ペインティング・クラフト・フォルム」(岐阜県現代陶芸美術館、2013)などがあるほか、国内外での展示およびグループ展に多数参加。第39回ファエンツア国際陶芸展買上賞(1981)、岐阜県芸術文化顕彰(2006)、第4回円空大賞展円空賞(2007)、地域文化芸術功労表彰(2013)、平成28年度日本陶磁協会賞金賞(2017)などを受賞し、高い評価を得ている。
岐阜県現代陶芸美術館では2回目の個展となる本展は、今年90歳を迎える伊藤慶二の眼差しが伝わる「HIROSHIMA」「沈黙」「尺度」「いのり」などの代表的なシリーズを網羅しつつ、新作も展示することで、ただの回顧展にとどまらないものとなっている。
