2025.4.28

大阪で楽しむチームラボ。植物園が丸ごとアート空間に

大阪市の長居植物園では、いまネモフィラが満開。このフェアに合わせ、同地の夜間を彩る「チームラボ ボタニカルガーデン 大阪」でも季節限定の作品を公開中。自然とテクノロジーが織りなすアート空間を他の作品とともに紹介する

文=坂本裕子 画像すべて ©︎チームラボ

チームラボ 風のなかの散逸する鳥の彫刻群
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昼夜ともに青く染まるライフガーデン

 大阪市立長居植物園は、大都市大阪に広大な敷地を持ち、“都会のオアシス”として親しまれている国内有数の植物園だ。バラ園、アジサイ園、ボタン園など11の専門園に、季節の花が植えられるライフガーデンがあり、1年を通じて多彩な植物を楽しめる。

 1974年に開園したこの植物園は、2011年には植物によりよい環境を造るため、土壌を入れ替え、樹木の間伐や配置換えを行い、2012年に再オープンした。2024年には開園50周年を迎えた歴史を持つ。

 ライフガーデンは、2020年から少しずつ面積を増やし、現在およそ2000平米。春にはネモフィラ、夏にはヒマワリ、秋にはコスモスが植え付けられ、絶好のフォトスポットとして人気だ。今年も春の花、ネモフィラがいよいよ満開の時期となり、可憐な花の群生が空気を青く染める季節がやってきた。そばの藤棚の花もほころんで、満開を迎えれば青と紫のハーモニーが美しい情景を見せてくれる。

 当園にはリニューアルオープンを機に、チームラボの夜間限定の常設展「チームラボ ボタニカルガーデン 大阪」がオープンした。昼間だけではなく夜にも幻想的な植物園を体験できるようになり、海外観光客からも注目されている。常設作品のほかにこのライフガーデンで季節限定の作品が公開されるのも風物詩となりつつあり、今年も展示が始まった。「生命は闇に浮かぶまたたく光―ネモフィラ」と題された作品は、人の動きに反応し、音とともに闇にネモフィラの花が青く発光するように見える。

 陽光のもとで風に揺れるみずみずしい青と、デジタル光のなかにさざ波のように連鎖する深みを持った青。この時期だけの体験、一度は味わってみたい。

チームラボ 生命は闇に浮かぶまたたく光―ネモフィラ 

自然と人の境界を無化するテクノロジー空間

 チームラボが各地で展開するプロジェクトにおいて一貫して追求しているのが、人間の肉体という枠を超えた「生命の輪郭の存在」へのテクノロジーを通じた意識喚起だ。

 生命は外から物質やエネルギーを摂取して、それらを再び外へ放出・排出することでその構造を維持している。ならば、生命とはその個体そのものだけではなく存在する環境とともにある。そう考えたとき、そこにある生命の輪郭はあいまいになり、連続する世界へ限りなく拡張していく。また、その場に存在するもの、人を改めて意識させられる。そうした感覚を体験できる場として作品が生み出されている。

 だから作品はいずれも、人のふるまいや環境の変化に応じてインタラクティブに変容する。同じ人がいないように、同じシチュエーションが存在しないように、作品の変化は2度と同じものになることはない。1回限りの体験は、置かれている環境、そしてその場にいる人をも含めて作品の一部になっていく。

チームラボ《ツバキ園の呼応する小宇宙─固形化された光の色》より。光り方の異なる3つのゾーンがある
チームラボ 自立しつつも呼応する生命の森―ユーカリ

滅びと永劫をはらむアート

 自然豊かな長居植物園では、有機的な自然がデジタルテクノロジーによって「自然が自然のままアートになる」。闇夜に輝く多様な光と音の世界は、それだけでも美しく夢幻的だ。しかしそれは、半世紀かけて育ち、整えられた森や池とともに、そこに生きる虫や水生生物、それらを餌とする鳥たちが営む生物のサイクルがあってこそ。公園の草木がなくなり、虫が死に絶え、飛ぶ鳥がいなくなれば、これらの美しく楽しい作品たちは消えるのだ。

 昼から夜へ、公園内の植物や土の香りがより濃密になった時間から動き出す彼らの作品は、つねにこの滅びの可能性を内包しつつ、身体感覚について、環境について五感に問いかけてくる。それは、未来への技術や環境を提示する万博とも呼応するだろう。

チームラボ《風のなかの散逸する鳥の彫刻群》は、鳥の飛翔をきっかけに「水の動き」をイメージした映像が動く
チームラボ《具象と抽象―二次林の入り口》より。森の中のはずが平面に見えてくる
チームラボ《大池に浮遊する呼応するランプ―Fire》より。水面を渡る風でランプの色が変化する

 なお、園内に併設される花と緑と自然の情報センターでは、大阪・関西万博応援イベント「PLANT EXPO 2025 in Nagai Botanical Garden」も開催中。コーヒーの出がらしやペットボトル、海藻やトウモロコシなど、意外な素材から作られたドレスやスポーツウェアなどが紹介されている。そのデザイン、クオリティはちょっとしたファッションショーだ。なかにはまもなく発売予定のものも。併せて楽しみたい。

「PLANT EXPO 2025 in Nagai Botanical Garden」より ピエール・カルダンのデザインによるウィンター・ウェアの素材は牡蠣殻とリサイクル・ペットボトル
撮影=筆者