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2025.6.27

下瀬美術館 坂茂が設計した水盤に浮かぶ唯一無二の「泊まれる」ミュージアム

2023年3月に開館した、坂茂建築の下瀬美術館をご存知だろうか。水盤に浮かぶ可動展示室という、これまでにない構造を持つユニークな美術館を訪ねた(本稿は2024年5月4日公開記事の改訂版です)。

文・撮影(クレジットがあるもの以外)=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

夜の下瀬美術館
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水に浮かぶ「可動展示室」

 世界遺産・厳島神社がある宮島。海を挟んでこの島を眺める広島県大竹市に、開館から1周年を迎えた下瀬美術館がある。

 下瀬美術館は、広島市に本社を置く建築資材の総合メーカー 丸井産業株式会社の代表取締役・下瀬ゆみ子と、その両親が半世紀以上をかけ形成してきたコレクション約500点をコアとする私設美術館だ。「アートの中でアートを観る。」をコンセプトに掲げており、建築はすべて世界的建築家である坂茂が設計した。

下瀬美術館外観 ©︎SIMOSE

 鏡面と曲線的な外観が美しいこの美術館は、海岸線と平行に並び建つエントランス棟、企画展示棟、管理棟が渡り廊下でつながれており、全長190メートル、高さ8.5メートルの「ミラーガラス・スクリーン」がこれらを一体化させている。

 ショップやカフェがあるエントランスはこの美術館の象徴的なスペースと言える。内部で存在感を放つのは、36本の木材を1本にまとめた巨大な2つの柱。柱は大樹のように放射状に大きく広がっており、空間をより広大なものに感じさせる。

下瀬美術館のエントランス
下瀬美術館のエントランス
夜にはエントランスの内部がくっきりと浮かび上がる