EXHIBITIONS

WRITER IN THE DARK

2025.06.28 - 07.27
 parcelでDIEGOによる個展「WRITER IN THE DARK」が開催される。

 DIEGOは、都市にひそむ構造や風景の「隙間」に目を向け、絵画やインスタレーションを通じて、そうした見過ごされがちな場所に新たな意味を与える実践を続けてきた。錆びた壁や資材置き場、足場や木材が乱雑に積まれた空間など、通常であれば無意識に通り過ぎてしまう風景にこそ、彼は制作の起点を見出す。それらはDIEGOにとって、「都市の縁辺」に存在する、風景の中に沈殿する気配が街の要素へと転化する可能性が潜んでいる。近年、画面にあえて暗い色調を持たせ、レイヤーを幾重にも重ねながら、時間の蓄積や曖昧な空気感を含んだ景色を描き出している。それは夕暮れの光や、埃、湿度、壁の汚れといった、都市の微細な情報をすくい取るような描写であり、視覚だけでなく身体的な記憶にも訴えかけてくる。

 本展は、DIEGOがこれまで探ってきた現場と展示空間、感覚と記録といったテーマに、あらためて向き合う。DIEGOは、自身が制作を行う「夜のスタジオ」と、それが最終的に「白いギャラリー空間」に展示されるときに生じる違和感に強い関心を寄せてきた。暗闇の中で構築された画面が、展示されることで意図せず明るく洗練されてしまうことへの違和感は、これまでも彼の制作を内側から突き動かしてきたとも言える。

 今回の展示では、照明の操作や空間構成を通じて、作品そのものが孕む「暗がりの中での存在感」の可視化に挑む。画面に落ちる影や、作品を取り巻く空気の温度、湿度といった要素が、都市の周縁に立ち現れる光と闇の関係性を空間全体で再構成する展示となる。たんに視覚表現にとどまらず、都市における制度、秩序、文化の周縁において生まれる「見えにくい価値観」に対して感応し、それを物質的・視覚的言語へと変換する行為。その作品に潜む断片的な文字、歪んだキャラクター、建築資材的な構造物は、それぞれが都市空間に内在する矛盾や複数の価値観の摩擦を象徴する。

 parcelで2回目の展示となる本展は、ギャラリー空間という制度的な白さのなかに、いかにして外部の感覚や風景を持ち込むことができるのかという挑戦であり、DIEGOが都市との対話を通じて見出した「知覚のズレ」や「存在の予感」を観客と共有するための場でもある。