2025.4.9

ブシュロンが支援。現代アートにおける女性の活躍を称える賞「Her Art Prize」で初の受賞者が決定

パリのハイジュエラーであるブシュロンが支援する、現代アートにおける女性の活躍を称える賞「Her Art Prize」にて、ウクライナ出身のアーティスト、ジャンナ・カディロワが初代受賞者として選出された。

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 1858年に創業したパリのハイジュエラー「ブシュロン」が支援する「Her Art Prize」で、ギャラリー・コンティニュア所属のアーティスト、ジャンナ・カディロワが初代受賞者として選出された。

 同賞はマリ・クレールとアート・パリが創設したもので、アート・パリに出展する女性アーティストのなかから、卓越したキャリアと革新的な作品を評価し、毎年一名を選出するもの。2025年の審査員は芸術の各分野で活躍する以下11名のメンバーで構成された。

 エロディ・ブーシェ(フランスの俳優・審査員長)、エレーヌ・プリ=デュケン(ブシュロンCEO)、セシル・ドゥブレ(ピカソ美術館館長)、ラビ・カイルー(ファッションデザイナー、オートクチュール組合メンバー)、ローラ・ラフォン(作家・作曲家・パフォーマー)、ヴァランティーヌ・ルセットル(Art Paris CEO)、ガリア・ルパン(Marie Claire Internationalチーフコンテンツオフィサー)、カテル・プーリケン(Marie Claire France 編集長)、マリー・ヴィナル(アートコンサルタント・キュレーター・作家)、マリー=セシル・ザンヌ(美術史家・文化事業家)(計11名)

 ファイナリストはアートコンサルタント、展覧会キュレーター、マリ・クレール寄稿者でもあるマリオン・ヴィニャールと、アート・パリのディレクターであるギヨーム・ピアンによって選出。自然、テクノロジー、人間の身体との関係性といった異なるテーマを扱う12名が選ばれた。そのなかには日本人アーティストである片山真理(1987年、Galerie Suzanne Tarasiève)も選出されている。

 今回受賞したジャンナ・カディロワは、1981年にウクライナで生まれ、現在も同国で活動を続けている。キエフのタラス・シェフチェンコ国立美術学校の彫刻科出身ながら、彫刻、写真、映像、パフォーマンスアートと幅広い分野で作品を展開している。ガラス、タイル、セメントといった現地の建築資材を用いたオブジェやインスタレーションが特徴。

 カディロワは、これまでコチ・ビエンナーレ(2023、インド)、バンコク・アート・ビエンナーレ(2022、第56回および第58回ヴェネチア・ビエンナーレの国際企画展の一環として開催)、第55回ヴェネチチア・ビエンナーレ(ウクライナ館)、キエフ・ビエンナーレ(2017)などに参加。また世界各地の美術館でも作品を発表しており、ウクライナの最高芸術賞である「シェフチェンコ国家賞」を受賞した初の女性でもある。

 カディロワは2014年の「オレンジ革命」時に、政治的アートを展開するグループ「R.E.P(Revolution Experimental Space)」のメンバーとして活動を始め、ロシアのウクライナ侵攻時も国内で戦争の実情を表現する作品を制作。侵攻に対する抵抗を表現し、2023年のアート・パリでは、爆撃によって破壊された公共建築物の内部を記録したシリーズ《Refugees》を発表。同作は、シモン・ラミュニエールがキュレーションしたテーマ企画「Out of Bounds」のひとつとして展示された。

Refugees 17, 2024 金属フレーム、キャンバスにプリント、ライトボックス 68 × 60 cm、ユニーク作品 Courtesy of the artist & Galleria Continua

 現在、CEOのエレーヌ・プリ=デュケンとクリエイティブディレクターのクレール・ショワンヌという二人の女性リーダーがメゾンを率いるブシュロンは、コレクションコンセプトやアーティスト研修機会の創出、各国のブティックでの現代アートコレクションの展示などを通じ、アートの未来を支えていく姿勢を示している。新しく始まった「Her Art Prize」の審査員でもあるブシュロン CEOのエレーヌ・プリ=デュケンは、とりわけ女性アーティストにフォーカスしたこの賞について次のようなコメントを寄せている。

 「女性リーダーとして、またアートを愛する者としてこのプロジェクトには、特別な思いがあります。次世代の才能ある女性たちを支援しながら、私たちの創造性と革新へのコミットメントを示すひとつの形でもあります。そして、これは継承していくべき価値あるものであると捉えています。より多くの女性が壁を乗り越えることで、未来の世代にとって、その壁は次第に消えていくはずです」。

 なおカディロワにはブシュロンより3万ユーロの賞金が授与。また、マリ・クレールとアート・パリによるプロモーションキャンペーンを通じ、フランス国内外でその活動が広く紹介される予定だ。